日本において、舞台と言えば、歌舞伎や能、狂言、日本舞踊など、和風の芸術作品としてのイメージが強いかと思いますが、アメリカをはじめヨーロッパ諸国では、演劇やオペラ、バレエ、ミュージカルとして親しまれてきています。
それこそ古代ギリシアの時代から親しまれてきた文化ですので、日本の演劇とは質も歴史も違います。そういった西洋演劇を気軽に堪能することができるのが、ナショナル・シアター・ライブの英国万歳!です。
英国万歳!(The Madness of George III)の基本情報
この作品は、1991年にロンドンで初演された舞台作品です。1994年には、イギリス、アメリカで映画化され大ヒットとなりました。そのため、舞台よりも映画としてのイメージを持っている方が多くなっています。
映画監督は、初舞台版の監督でもあったニコラス・ハイトナーが務めています。ニコラス・ハイトナーと言えば、1991年から2001年まで上映された舞台ミス・サイゴンでも有名です。
この作品は、18世紀の終わりの英国王室が舞台となっています。この時代は、アメリカ独立戦争やフランス革命など、イギリス史の中でも、最も動乱の時代となっていました。
ジョージ3世が精神疾患を患い、乱心してしまった事が切っ掛けとなり、政権を奪取しようと目論む皇太子、そして、皇太子の目論見をどうにか阻止したいジョージ3世の側近とが、揉み合い、めちゃくちゃになりながら、進んでいくブラックコメディです。
しっかりとコメディとして成立しながらも、人間のもろさや汚さなどを、しっかりと描き切っているのは、監督のニコラス・ハイトナー手腕だと言えます。
ナショナル・シアター・ライブの英国万歳!
ナショナル・シアター・ライブとして放映されるのは、2018年の11月20日にノッティンガム・プレイハウスで公演された作品です。上映時間は、休憩を含むと3時間近くあり、非常に見ごたえのある作品に仕上がっています。
こちらの作品は、イギリスの劇作家であり、小説家でもあるアラン・ベネットとアダム・ペンフォードがタッグで仕上げた作品となっています。
出演は、ミス・マープルのロナルド・ハウェズ役や、ウルフ・ホールのスティーブン・ガードナー役、プーと大人になった僕のジャイルズ・ウィンズロウ役としても知られているマーク・ゲイティス、そして、追想やパグ・アクチュアリー ダメな私のワンダフル・ライフなどの名演で注目を集めているエイドリアン・スカーボローです。
『英国万歳!』の口コミや評判
マーク・ゲイティスが、数奇な運命をたどったジョージ3世の苦悩の日々を演じているのですが、その演技があまりにも素晴らしく、感情移入しすぎてしまい、見ているのが辛すぎるといった声を多く見つけました。
原作となった映画バージョンとは違い、ジョージ3世の人としての苦悩や成長、衰退、つかの間の幸福など見事に演じ切っています。
また、公演されたノッティンガム・プレイハウスは、1963年に建てられた歴史のある劇場という事もあり、非常に荘厳な雰囲気のあるシアターです。それらが相まって、非常にクオリティの高い映像作品になっているのです。